本格的なスポーツ走行やドリフトに欠かすことができないLSD(トルセンタイプ)を標準装備する「GT」グレード。
トヨタ86のグレード中で最も売れている人気モデルだ。
「GT」グレードの価格は、6MT車が279万円、6AT車が287万円に設定。
S15シルビア・タイプR(ターボエンジン搭載)の車両価格239万円を軽く上まわり、ER34スカイライン25GTターボの299万円に迫る勢いだ。
総支払額は300万円を超えてくるので、決して若者が気軽に購入できる価格帯とは言いがたい設定だ。
参考までに「RC」グレードと比較すると、6MT車は80万円、6AT車は88万円割高な計算になる。
走りの装備としては、トルセンLSDが標準装備され、タイヤ&ホイールも17インチにアップ。
装着されるタイヤは、ミシュランPRIMACY HP(215/45R17)で、トレッドパターンから推測するとハイグリップタイヤでは無さそうだが「RC」グレードに比べてトラクション能力は確実に向上する。
ブレーキローターは、前後ベンチレーテッドタイプにグレードアップされ、フロントローターは290mmに大径化される。
また、6AT車を選択した場合、パドルシフトを標準装備するのも大きな魅力だ。
エクステリアは、前後バンパー、ドアミラー、ドアノブがカラード化され、ヘッドライトはLED付クリアランス付きヘッドライト(HID付き)で差別化がはかられる。
インテリアは、エアコンが左右独立タイプのオートエアコンが標準装備され、ステアリング、シートファブリック、シフトノブ、ペダル、ドア内張などが上級タイプに変更。
メーターパネルは、タコメーターが白文字盤になり、デジタル式スピードメーターとREVインジケーターが追加装着される。
細かな点では、メインキーがスマートエントリーになり、エンジン始動はプッシュスタート式になる。
しかし、トヨタ86よりも廉価なホンダCR-Zが全グレードでプッシュスタート式を採用することを考慮するとやや不満が残る。
「GT」グレードは、スポーツ性能と快適性を高次元で両立させたモデルであり、ノーマルの状態でもサスペンションとタイヤのバランスに優れ、フルノーマルのままでもサーキット走行を楽しむことができる。
ドリフト経験者だったら、テールスライドに持ち込むことは極めてイージーだ。
元祖AE86のように「サスペンションと機械式LSDを装着しないとまともにサーキット走行できない・・・」とか、S13シルビアのように「サスペンションを交換しないと車高が高くてカッコ悪い・・・」といった経験は完全に忘れてしまっていい。
また、6AT車のポテンシャルも極めて高く、2速以降はトルコンを介したスリップロスを感じさせず素早いシフトアップ/ダウンを実現。
GTNET独自のサーキットにおいてもノーマル状態においては6MT車と遜色ないベストタイムを記録するなど、オートマチックでも十分にサーキット走行が楽しめることを確認している。
トヨタ86を1台だけ所有し、普段乗りからサーキット走行を楽しみたい人にとって「GT」グレードは値段は張るがベストチョイスになるだろう。
充実した装備とバランスのとれた運動性能を楽しむ事ができる「GT」グレードだが、装備を極限まで簡素化した「RC」グレードに比べて車体重量は増加する。
「GT」グレード6MT車の場合で+40kg、6AT車では+60kg重たくなる。
パワーウェイトレシオに換算すると、「RC」の5.95に対して「GT」グレード6MT車は6.15、6ATは6.3に劣化。
「GT」グレードの6AT車で「RC」グレードと同じパワーウェイトレシオを得るには、212ps必要な計算になる。
省燃費D4-Sシステムを採用するFA20エンジンで、スポーツマフラーとエアクリーナーを装着しても+12ps得られる保証はない。
ただし、快適性は「RC」グレードに比べて格段に向上するので、目をつぶりたいところだ。
レクサスIS Fの技術が活かされたオートマチックミッションは、スリップロスを抑えたレスポンスの良い変速を実現。
ホイールスピンを伴う急発進はできないが、サーキット走行にも耐えられるポテンシャルを発揮する。
AT車だったらF1気分でパドルシフトを楽しみたいものだが「G」グレードの6AT車にはパドルシフトが付いていない。
パドルシフトが付いているのは「GT」および「GT"LIMITED"」の2グレードだけになるので要注意だ。
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